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実践的なアジャイルプラクティスを学べるカイゼン・ジャーニーを読んだ
Tweetカイゼン・ジャーニーを読み終えたので感想を書きたいと思います。
カイゼン・ジャーニーはストーリー調で話が進んで行くのでとても読みやすかったです。とある企業でのチーム開発の物語で、主人公がチームでプロダクトを作成する過程で様々な困難とぶつかりながらも成長していくといったストーリーです。
本の表紙にアジャイルという言葉が出てくる通り、アジャイル開発についての本です。しかしながら本で紹介されているプラクティスはアジャイル開発でもそれ以外の開発でも使えるものが多かった印象です。紹介されているプラクティスは実践に基づいたものであるため、他の本では紹介されていないような一歩踏み込んだプラクティスが多かった気がします。本の冒頭でも紹介されているのですが、プラクティスをそのまま導入するのではなく、自分たちのチームに適応できるかを一度検討する必要があると記述されていたのも印象的でした。
これ以降は本で紹介されていたプラクティスの中で印象に残っているものを上げていきたいと思います。
Working Agreement
ストーリーの中でチームメンバーがフレックスタイム制度を理由にデイリースクラム(ミーティング)に遅刻してくることに対して、他のメンバーがストレスを感じ、口論になってしまった場面で出てきたプラクティスです。
ルールが明確になっていないが故に、メンバー間の認識にズレが生じ、ストレスが溜まっていくといった局面は誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
そんなときに役に立つのがWorking Agreementです。Working Agreementはチームの中でのルールです。 本の中では以下のようなWorking Agreementの例が上げられていました。
- 欠席の時はデイリースクラムが始まる10時までにSlackのチャンネルで全員に連絡する
- デイリースクラムは10時から15分間以内でタスクボードの前で立って行う
- ミーティングの際は議論を活発化させるために腕を組まない
こんな風にWorking Agreementとしてチームのルールが明確になっていると小さなストレスはたまりにくいなと感じました。また、Working Agreementは制約が厳し過ぎてもだめなようで、チームメンバー全員が守れるようなルールにすると良いそうです。あとは継続的にWorking Agreementを見直すことも重要だと本には書いてありました。
デイリースクラムやふりかえりなどは実施頻度も多く、些細なことでストレスも溜まっていきやすいので、Working Agreementを決めておくといいんじゃないかなと個人的にも思っています。
ドラッガー風エクササイズ
こちらもチームメンバー間の認識の齟齬によって起こる問題を解決してくれるプラクティスです。 自分が思っている自分の役割とチームメンバーが思っている自分の役割がずれていると、うまく開発が進まないこともあるかと思います。 そんなときに、各メンバーの役割についてメンバーがどう思っているかをワークを通して共有していくのがドラッガー風エクササイズです。
特に新しいチームメンバーが入ってきたりすると、チームメンバーの役割が少しずつ変わっていくこともあると思います。 そんな時にドラッガー風エクササイズを実施し、役割についての共通認識を合わせると良さそうです。
ドラッガー風エクササイズでは以下の質問に回答していきます。
- 自分は何が得意か
- 自分はどうやって貢献するつもりか
- 自分が大切に思う価値は何か
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか
役割について議論するだけじゃなく、メンバーのスキルや価値観を知ることで今まで気付かなかった新たな発見もありそうです。ただ、良いプロダクトを顧客に届けることが最終的な目的なので、個人の意見を尊重しつつも、チームのパフォーマンスが最大化されるような役割分担にすることが重要なのかなと感じました。
また、新しいメンバーが入ってきた時は、ドラッガー風エクササイズと一緒にインセプションデッキの確認をすると、プロジェクトの目標や方針も共有できるので良いとも本に書いてありました。
ファイブフィンガー(問題がないという問題)
こちらはメンバーが直面している不安要素を確認するためのプラクティスです。
ふりかえりやミーティングで不安なこと、問題に思っていることについて聞いたときに、「問題ありません」と返ってくる時は注意が必要です。毎日、開発を行っている中で問題がなくなることはないという前提です。
ファイブフィンガーはメンバーの本心を探るためのツールで、自分の今の状態を手を使ってを表明します。
- 5本:とてもうまくやれている
- 4本:うまくやれている感触がある
- 3本:可もなく不可もなく
- 2本:不安が少しある
- 1本:全然だめで絶望的
メンバー全員が一斉に自分の状態を表明することで、他人の意見に左右されない純粋な状態を確認することができます。全員が自分の状態を表明したあとは、そう思う理由を聞いていき原因を探っていきます。
確かに、自分の状態を最初から発言するより、指標に沿って自分の状態を手で表明する方が簡単ですし、メンバーの本音も引き出しやすいような気がします。また、中には「原因はわからないけど、なんか辛い」というような感覚的なものもあると思います。そういった感覚的なものもファイブフィンガーだと表明しやすいですし、問題が解決できなくても、辛いという状態を把握しておくだけでも意味があると思います。 本の中ではデイリースクラムの中でファイブフィンガーを取り入れていましたが、ふりかえりでも有効なのかなと個人的には思いました。
まとめ
今回はカイゼン・ジャーニーの感想について書きました。本は本当に読みやすくて勉強になることばかりでした。上で上げた3つのプラクティス以外にもまだまだたくさん紹介されているので、気になった人は読んでみるのがおすすめです。読むのに必要な前提知識はほとんどないので、アジャイルについて知らない人から、現場でアジャイル開発を実践している人まで、幅広く勉強になる本だと思います。 カイゼン・が面白かったので次は続編のチームジャーニーも読んでみたいなと思いました。